ありがたいことに、2019年から毎年一回、現代食文化論の授業の一環で、バルサミコ酢の講義をさせて頂いています。

大学では私も栄養学部の出身で、同じ学部の先輩の立場で海外で働くことや、バルサミコ酢の醸造についてはもちろん、食品開発の分野で活躍される学生さんも多いため、食品開発や、販売、マーケティングなども含めてお話させて頂きましたが。今年はコロナも落ち着いたところで、食味体験も交えて、我が家の伝統的な製法バルサミコ酢と、工業製品との違いを見た目、香り、味を感じつつ講義を進めました。
授業後の学生さんたちの質問感想などを抜粋して紹介したいと思います。
学生さん1 (以降数字)
深みがある芳醇さを匂いからでも感じるのだと痛感しました。
また、味に関してはフルーティーな味を感じました。少しフルーティーなワインっぽい味わいが口いっぱいに広がりました。年数違いもぜひ味わってみたい。いつかイタリアが大好きな両親にプレゼントしたいです。
アンサー(以降A.)ほっこりする感想で、嬉しくなりました。いつか、ご両親とイタリアにもいらしてくださったら嬉しいです。

2.どのように使用したら良いのか等全く知識がなかったため、一切口にしませんでした。しかし、香りの比較や試飲、堂内さんのお話を通して、バルサミコ酢の魅力に気が付くことができ、今後はバルサミコ酢を使用して料理の幅を広げることができたら良いと感じました。
A.是非是非色々試していただけたら嬉しいです。レシピページはこちらから

20年ほど前と比べたら、比べ物にならないくらい普及してきたイタリア食材と思っていましたが、案外まだまだ知られていないという実感ができた素直な感想でした。私の周りにはイタリアに携わってお仕事をされていて、イタリア食材についても見識が深い方が多いので、つい日本の現状を見落としがちだと反省した次第です。
3.オンライン上とはいえ樽や貯蔵場所の様子を拝見でき非常に興味深い時間でした。パッケージを地球環境に配慮した素材、販売価格に基づいたパッケージングデザインなど計算し尽くされていいらっしゃることに感動しました。

A.今イタリアでは多種多様にわたる企業が、プラスチックの使用を最小限にする、リサイクルが可能なパッケージングを見直しを迫られており、私たちの様な小さな商売でもできるところはないか?とかなり考えて作ったところを紹介しました。印象に残ることも大事ですし、商品を購入されたお客様が、お家で箱を開ける時も嬉しくなる様なデザインや、私たち作り手のメッセージなどが届けば幸いです。
4.バルサミコ酢の製造方法や使用している樽について学ぶことができ、とても勉強になりました。何年も作業を行って、どんどん良いものにしていく製法はとても魅力的に感じました。
A.継続は力なりという言葉をバルサミコ酢が熟成するにつれ実感する日々です。より良いものにするために努力していきたいと思います。

5.技術、知識があってもそれを発信しなければ仕事はこないというところも勉強になりました。もうすぐ社会人になるのですが、どんなこともどこかで役に立つかもしれない、とフットワークを軽く行動し学ぶことや、海外でも活躍できるよう自分の意見をしっかり持ちながら生活することが大切なのだということも学ぶことができました。
A.色々な可能性がある学生さんたち皆さん色んなことに挑戦していただけたらとコメントを見ながら楽しみです。

6.市販のものとの香りや味の違い等も五感で体験できたのでより、理解が深まりました!イタリアに旅行に行こうと思っているのですが、おすすめのお店や場所(景色など)とかはありますか?
A.良いところがありすぎて、難しい質問です!有名どころを抑えるのもまた楽しいし、小さな村を訪ねる、どんな体験をしたいか?テーマを絞って調べてみることをお勧めします。

7. バルサミコ酢を今まで食べたことがなかったのですが、伝統的なバルサミコ酢と大量生産されているバルサミコ酢、こんなにも違いがあるのかと驚きました。
A.大半の学生さんからのコメントに違いについてコメントを頂きました。並べて食べてみると、違いが歴然としてますよね。

8.バルサミコ酢は、樽っぽい匂いがし、フルーツっぽいけどすっぱくてローストビーフ、サラダ、お寿司にかけたら美味しそうだと思いました。

A.伝統的な製法のバルサミコ酢は、酸味だけでなく、旨みもあるので、お醤油の様に色々なお料理に合わせることができるのです。
9.原材料・熟成期間・製法・作り方を実際聞くことで、伝統的製法がいかに時間と手間をかけているかが分かり、大切にする気持ちが分かった。何事も止めることは簡単であるが、一旦止めてしまうと、また開始したくなった時、継続の何倍もの時間と労力がかかると思う。伝統を守ることは大変であると思いますが、本物のバルサミコ酢を作り続けてください。応援します。
A.ありがとうございます。バルサミコ酢を作っている人は、所有者というよりも、一時の番人である。と聞いたことがありますが、まさにその通り。この先50年100年、子や孫に引き継いでいけるよう努力が必要だと感じるこの頃です。

10.バルサミコ酢のことを考えるだけでなく、消費者目線で、どうしたらより良い状態で届けられるかを大切にされていて、そういった考え方は、食を届ける仕事をする上でとても重要だと思うので、私もそういった目線を大切にしたいと思います。質問なのですが、バルサミコ酢について何も知らない状態で醸造を始めて、ノウハウなどはどのようにして習得したのでしょうか。また、みそや醤油もご自身で作っておられるとの事ですが、温度管理など、バルサミコ酢との注意点の違いはありますか。

A.樽屋さん、葡萄農家さん、バルサミコ酢を作っていらっしゃる方を色々訪問したり、バルサミコ酢愛好者協会が主催する理論講習会に参加して理論、歴史、実際の作り方を学びました。また、醗酵貯蔵学の色々な本を読んだりその中で、酵母、酢酸菌、その他微生物の色々な特性、最適温度帯や醸造室の環境を整えるなど試行錯誤しています。醗酵という分野はとても面白くて、バルサミコ酢とは直接関係がないように思いますが、味噌や醤油作りも微生物の特性を最大限生かすにはどうしたら良いか?工夫する共通点があり、バルサミコ酢造りにもつながっています。味噌醤油作りの話はこちらから
11.他の授業でワインの勉強をしているのですが、製法や、作業工程に似ているところや逆に大きく異なるところが自分なりに理解できて面白かったです。
「種を蒔かなきゃ芽は出ない」という言葉に心を動かされました。何事にもチャレンジをし、自分の将来を自分で切り拓いていきたいと強く思いました。

A.醸造はどれも本当に面白くて、私も機会があれば、ワイナリーや、味噌、酒、醤油、酢、チーズ工場などなど訪問しています。やはり理解を深めるには、見に行くのが一番だと思っています。
他にもまだまだたくさんの感想をいただきました。質問を中心に抜粋して載せましたが、嬉しかったのは皆さん、工業的に大量生産されたバルサミコ酢と、伝統的な製法のバルサミコ酢の違いをしっかり感じてくださったこと。百聞は一見にしかず。この授業を実現してくださり、日本の販売店、伊勢丹新宿のダローマまで買いに行って下さった担当の先生に感謝をいたします。
皆さん是非、将来イタリアに来ることがあったら声をかけて下さい。
この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。