春には毎年、伝統的製法のバルサミコ酢醸造で使う、唯一の原料としてモストコット(葡萄の絞り汁を煮詰めたもの)を濾過作業をします。
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アルコール発酵しているので、濾過した後のモストコットはビンサント(デザートワイン)のような素晴らしい味と香り。アルコール度数としたら8度前後。
これを飲むことはせず、すぐにバルサミコ酢の原料として使うため、酢酸発酵専用の大樽へ何回かに分けて移し替えます。
というのも、このモストコット糖分が残っているので、ワインの酢酸発酵のようにワインに種酢を入れたらできるというような簡単なものありません。
多量の糖分は酢酸菌の働きを邪魔するので、バランスが崩れると酢酸菌が死んでしまい、酸度が生まれず腐敗に傾くこともあります。
バルサミコ酢は酢ですから、酢酸菌が上手に働く条件を整えてあげるというのが私たち醸造をする者の仕事。
毎年新しいアルコール度数があるモスココット(酢酸菌の餌になるというとイメージしやすいかもしれません)を追加してあげないといけないため、9月に葡萄の収穫をして、ゆっくりとアルコール発酵を行い、春には濾過作業をします。
もうこの作業は14回目。思い出深い年はなんといっても、息子が生まれた2013年。4月15日生まれたため、ばっちり濾過作業の時期と重なり、タンクによじ登るためどう考えても臨月は無理そう。
まあ2人目だし、産後大丈夫だろうとたかを括り、生まれてくる前日まで濾過したモストコットを入れる樽を掃除をしたりしてました。それを見た姑がすんごいびっくり。止められましたが、予定日1週間前で、長女は予定日過ぎて10日目に生まれ難産だったためもういい加減に出てきて欲しいから、やってるので大丈夫と働き回っていたら、次の日の早朝安産で生まれてきました。
この写真は生まれてくる12時間前
が、誤算はこの作業、かなり重労働。産後2週間後にやるもんじゃないというのが私の結論。流石に作業後、1日起き上がれなくなりました。
他人に任せたのでは色々な状態を見ないと納得したものにならないため、夫婦力を合わせないとできないバルサミコ酢。
まあ結婚生活もモストコットのようにオリも溜まれば香りも味も増す。バルサミコ酢のように年数が経って円熟したい物です。
今年の濾過作業の様子はこちらから