すっかり桜が満開のモデナ。やっと寒気が落ち着いて、満開になったので、今年は庭のさくらんぼ🍒かなり期待です。

日本でお酢と言えば、米酢をはじめ、穀物を主原料としたお酢が一般的ですが、イタリアで一般的にお酢といえば、ワインビネガー。我が家でも欠かせないアイテムです。

バルサミコ酢を醸造していたら、ワインビネガーなんて必要なのですか?と思われる方いらっしゃるかもしれませんが、なかなかワインビネガーの世界も奥が深いのです。

バルサミコ酢は特別なお酢ですから、我が家でもそう毎日ジャバジャバ使っているわけではなく、普段使いはワインビネガーを使っています。

ワインビネガーとバルサミコ酢何が違うか整理しましょう。

・ワインビネガー

 葡萄の糖分が全てアルコールになったワインが酸化してできる酢 熟成期間は半年から1年程度 日本では果実酢というカテゴリーに分類されています。

・バルサミコ酢

 葡萄の汁を煮詰めたモストコットの糖分の一部がアルコールに変わったものが酸化してできる酢。熟成期間は材質の異なる木樽を用いて、年に一度移し替え作業をしながら12年以上

そんなわけで、ワインビネガーは糖分が残っていないこと、バルサミコ酢と比べると短い熟成期間でお酢になる。力強い酸味が特徴です。

正直言って日本にいた頃、ワインビネガーは酸味が強すぎておいしいと思った事がなかったのです。が、自分で作ってみるとまたこれが美味しい!どうしてなのかな?と不思議に思って調べたところ、日本の市販のワインビネガーをはじめとする果実酢は、1L当たり300g以上の果汁を使用したものという定義があって100%葡萄の汁を使っていない?!

一体1ml1g程度と考えた場合、300ml。残りの700mlは何が入っているのでしょう?醸造アルコールというものを添加してお酢にしたり、酸度の高いお酢を加えて薄めたりして作っているのだそう。そりゃ旨味も薄くなる訳だと納得。

 葡萄をワインにするには、廃棄量を考えたら1L当たり、最低でも3割増の果実が必要になり、酵母を使ってアルコール発酵してワインにするには時間もかかるのですが、そこで生まれるエステル化合物の芳香が生まれ、香りの高いワインになってゆく。それを酢酸発酵していく過程で酢酸、クエン酸、りんご酸、などの有機酸が生まれたり、増えるので、ワインから作り出すお酢は手間も時間も材料費もかかる美味しいリッチなお酢。でもお酢って絶対ワインより安いのは、何故なのでしょう?それはお酢は、ワインが古くなって酸化して飲めなくなったもの。

実際今でもイタリアではワインを自宅用に作っている人は、ワインビネガーも作っている方が大半。もちろん、お酢にするためには、酸化防止剤が入っていないワインが必要です。

 我が家では秋の葡萄作業をする時期にモスト(葡萄の絞り汁)1番絞りをバルサミコ酢造りに利用して、そのあと絞り出した100Lほどのモストからワインを作り、それをワインビネガーにします。

鑑定講習会ではワインビネガーも試していただいてますが、これを食した皆さん、こんなにワインビネガーが美味しいとは知りませんでした!という方が多く、譲ってください!とお願いされることもしばしば。

日本に帰って高級米酢を使ったのにもかかわらず、サラダの味がボケて感じたのは酸度の差だったようです。サラダには良いワインビネガー使うと本当に味がしまる。主張が強いイタリア野菜には絶対にあいます。逆に日本のお寿司や酢物にはワインビネガーは強すぎて繊細な日本料理にはあわない。適材適所がある事を実感。

実はこのワインビネガー我が家では食用以外にも意外な使い方をしています。

その大部分は大樽に入れて保存し、バルサミコ酢の樽の清掃に使っています。

ワインビネガーは大樽に保存してあります

我が家のワインビネガーファンが聞いたら卒倒しそうな話ですが、匂いが移ってしまうので、化学薬品や、洗剤は使えない伝統的なバルサミコ酢造り。殺菌消毒にはワインビネガーを使うのです。もっと贅沢な消毒方法はグラッパを使用すること。同じワインの一部を2回蒸留して、グラッパにし、カビ防止に樽に吹きかけたり、醸造室の道具の消毒に使っています。材料の葡萄があるからこその特権。これ購入してたらそれだけで大変なことになってしまいます。

ワインビネガーとグラッパを使って綺麗になった樽

全てバルサミコ酢の樽の手入れは、樽の中のバルサミコ酢同様の葡萄由来のものを使うので、伝統的なバルサミコ酢の醸造は桁違いに贅沢なものなのかもしれません。

 

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。