葡萄を絞る作業が終わると、ここからがワイン醸造とは全く違う、バルサミコ酢造りだけの作業に移る。葡萄の果汁を煮詰める作業だ。

バルサミコ酢の大きな特徴は、酢なのに甘味が残っているところだろう。バルサミコ酢の大きな特徴である芳香の第一ステップもこの煮詰め作業から始まる。

ここからちょっと化学的な話

絞った葡萄の果汁を大釜で煮詰めることによって、糖類が熱と反応し、芳香アルデヒドの一種であるフルフラールを形成する。

こんなふうに書くと一体何の話?となる読者も多いだろう。プリンのカラメルソースをイメージして欲しい。水に砂糖を煮溶かしただけのシロップ(ガムシロップ)には無臭と言って良いほど、香りはないけれど、プリンのカラメルソースには鼻に抜けるような芳香がある。

もちろん香りがよくなるからと言って、プリンのカラメルソースのように葡萄液を焦がしてしまっては、苦いバルサミコ酢ができてしまうからそれはご法度。ではどうするのかというと、大釜を使って直火で煮詰めるという作業を行うのである。古くは薪、現在ではガスの火を使って煮詰め作業をする。どうしても火は下からということになるので、鍋の底の火力と近い部分は高温になり、焦げないまでもフルフラールが形成されやすい環境が出来上がる。

もちろん液体は温度の高低差があれば対流が起こるので、大量の水分を含む液体が入っている鍋の中では、そこが焦げ付いてしまうことはないが、液体は煮詰め作業を行うにつれ、白い葡萄を使っても褐色へとどんどん変化し、とても良い香りが庭中に広がる。

左が絞ったばかりの葡萄液。右に詰め始めて数時間経った葡萄液

皆さんもきっとジャムを作っているときなどにある時点から、家の中がジャムのいい香りに満たされるのを感じたことがあるのではないかと思う。それと同じ原理なのである。

それからもう一つ忘れてはいけないのが、メイラード反応。こちらは糖とタンパク質(アミノ酸)を加熱したときに行われるアミノカルボニル反応の一種で、こちらも糖とアミノ酸の種類によって、複雑な香気成分の生成させ、褐色色素が生じる。わかりやすい例を出すと、肉を焼く、玉ねぎを炒めるなどの色の変化、また醤油や味噌の醸造中の褐変もメイラード反応によるものなので、バルサミコ酢造りにおいては、まず葡萄液の煮詰め作業、熟成期間中にもこのメイラード反応が進むと考えられ、バルサミコ酢独特の色である褐色へと導いていく。

バルサミコ酢の樽の中の液体の色の変化

前述の二つの反応は、酵素は関係ないけど、葡萄のには酵母や酵素というものも働くからどんなに白い葡萄を使ってもどんどんと褐色に変化していくから褐色のバルサミコ酢が生まれるというのがわかっていただけたら嬉しいです。

葡萄の可能性というのは本当に大きくて、バルサミコ酢造りというのは科学的なことを突き詰めれば突き詰めるほど奥が深くて面白いのですが、実際の作業現場はものすごく重労働。やーっと絞った葡萄の汁は電動ポンプで絞った先から大釜へ。流石に400Lを越す液体を手作業で移すのはもう体が持ちません。

大窯に葡萄液を入れる

大体この作業が終わるのは夕方で、全ての液体を移し終わった後は蓋をして、次の日の早朝に火を入れる準備をします。

点火は朝の5時ちょっと前。まだ真っ暗な中、蓋を取り、強火で約2時間すると大量のアクが表面に浮いてきます。

灰汁が固まり始めたところをすくう。灰汁だけでも毎回20kgほど

それを全て取り除いて火を弱め、表面が動くぐらいに火力を調節しながら煮詰めていきます。葡萄の糖分にもよりますが、大体火を弱めて12時間後くらいに作業終了。その間、葡萄の収穫に出かけ、葡萄を絞る作業を並行して行うので、一日中作業している感じ。煮詰まる頃にはすっかり日も暮れて、辺りは真っ暗。煮詰めすぎてしまっては、大事なアルコール発酵が起こらなくなってしまうので、煮詰め加減には大変に気を使います。

煮詰まるのは夜

褐色の艶のある液体を眺める時間もなく、熱々のモストコットをステンレスタンクに保管して、その日絞った葡萄の果汁を大窯に入れ次の日に備える。こんな作業が続きます。

雨が降れば収穫や絞る作業ができないので、おやすみになりますが、葡萄を煮詰める作業は続行。

雨が降ると収穫作業や絞る作業はお休み

今年は最後に雨に降られましたがおおむね良好。雨上がりにダブルで虹が見えてなんだか得した気分でした。

葡萄畑にかかるダブルの虹

今年もなんとか葡萄作業が終わったことに感謝して!

葡萄の収穫作業の様子はこちらから

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