ワインビネガーの意外な使い方

すっかり桜が満開のモデナ。やっと寒気が落ち着いて、満開になったので、今年は庭のさくらんぼ🍒かなり期待です。

日本でお酢と言えば、米酢をはじめ、穀物を主原料としたお酢が一般的ですが、イタリアで一般的にお酢といえば、ワインビネガー。我が家でも欠かせないアイテムです。

バルサミコ酢を醸造していたら、ワインビネガーなんて必要なのですか?と思われる方いらっしゃるかもしれませんが、なかなかワインビネガーの世界も奥が深いのです。

バルサミコ酢は特別なお酢ですから、我が家でもそう毎日ジャバジャバ使っているわけではなく、普段使いはワインビネガーを使っています。

ワインビネガーとバルサミコ酢何が違うか整理しましょう。

・ワインビネガー

 葡萄の糖分が全てアルコールになったワインが酸化してできる酢 熟成期間は半年から1年程度 日本では果実酢というカテゴリーに分類されています。

・バルサミコ酢

 葡萄の汁を煮詰めたモストコットの糖分の一部がアルコールに変わったものが酸化してできる酢。熟成期間は材質の異なる木樽を用いて、年に一度移し替え作業をしながら12年以上

そんなわけで、ワインビネガーは糖分が残っていないこと、バルサミコ酢と比べると短い熟成期間でお酢になる。力強い酸味が特徴です。

正直言って日本にいた頃、ワインビネガーは酸味が強すぎておいしいと思った事がなかったのです。が、自分で作ってみるとまたこれが美味しい!どうしてなのかな?と不思議に思って調べたところ、日本の市販のワインビネガーをはじめとする果実酢は、1L当たり300g以上の果汁を使用したものという定義があって100%葡萄の汁を使っていない?!

一体1ml1g程度と考えた場合、300ml。残りの700mlは何が入っているのでしょう?醸造アルコールというものを添加してお酢にしたり、酸度の高いお酢を加えて薄めたりして作っているのだそう。そりゃ旨味も薄くなる訳だと納得。

 葡萄をワインにするには、廃棄量を考えたら1L当たり、最低でも3割増の果実が必要になり、酵母を使ってアルコール発酵してワインにするには時間もかかるのですが、そこで生まれるエステル化合物の芳香が生まれ、香りの高いワインになってゆく。それを酢酸発酵していく過程で酢酸、クエン酸、りんご酸、などの有機酸が生まれたり、増えるので、ワインから作り出すお酢は手間も時間も材料費もかかる美味しいリッチなお酢。でもお酢って絶対ワインより安いのは、何故なのでしょう?それはお酢は、ワインが古くなって酸化して飲めなくなったもの。

実際今でもイタリアではワインを自宅用に作っている人は、ワインビネガーも作っている方が大半。もちろん、お酢にするためには、酸化防止剤が入っていないワインが必要です。

 我が家では秋の葡萄作業をする時期にモスト(葡萄の絞り汁)1番絞りをバルサミコ酢造りに利用して、そのあと絞り出した100Lほどのモストからワインを作り、それをワインビネガーにします。

鑑定講習会ではワインビネガーも試していただいてますが、これを食した皆さん、こんなにワインビネガーが美味しいとは知りませんでした!という方が多く、譲ってください!とお願いされることもしばしば。

日本に帰って高級米酢を使ったのにもかかわらず、サラダの味がボケて感じたのは酸度の差だったようです。サラダには良いワインビネガー使うと本当に味がしまる。主張が強いイタリア野菜には絶対にあいます。逆に日本のお寿司や酢物にはワインビネガーは強すぎて繊細な日本料理にはあわない。適材適所がある事を実感。

実はこのワインビネガー我が家では食用以外にも意外な使い方をしています。

その大部分は大樽に入れて保存し、バルサミコ酢の樽の清掃に使っています。

ワインビネガーは大樽に保存してあります

我が家のワインビネガーファンが聞いたら卒倒しそうな話ですが、匂いが移ってしまうので、化学薬品や、洗剤は使えない伝統的なバルサミコ酢造り。殺菌消毒にはワインビネガーを使うのです。もっと贅沢な消毒方法はグラッパを使用すること。同じワインの一部を2回蒸留して、グラッパにし、カビ防止に樽に吹きかけたり、醸造室の道具の消毒に使っています。材料の葡萄があるからこその特権。これ購入してたらそれだけで大変なことになってしまいます。

ワインビネガーとグラッパを使って綺麗になった樽

全てバルサミコ酢の樽の手入れは、樽の中のバルサミコ酢同様の葡萄由来のものを使うので、伝統的なバルサミコ酢の醸造は桁違いに贅沢なものなのかもしれません。

 

バルサミコ酢造り ジュニパーベリーの樽導入 

 ずいぶん前からジュニパーベリーの樽が欲しかった。鑑定会でもジュニパーベリーの樽で熟成させたものと、一発でわかる独特の香りがして、好き嫌いが分かれる。特に、10年程度の熟成では松脂を舐めているような強烈な香りと味で、お世辞にも美味しいとは言えない。

が、2030年以上経ったものはなかなか良いのである。お料理を選ぶとポテンシャルが発揮されるような感じ。

我が家の通常の樽のセットは5つで構成されていて、桑、オーク、栗、桜、アカシアで構成しているが、そのセットに入れないジュニパーベリーの大きめの樽が欲しいと思っていた。

ただ、ご存知のように、低木なので、樽ができるような大きなジュニパーベリーの材木はなかなか樽屋でも手に入らないし、あっても大変な高額になる。

山の中で見つけたジュニパーベリー

そんなわけで、醸造家の中にはジュニパーベリーの木片を樽の中に入れる人や、側と呼ばれる周りの板の一部や、底板だけにジュニパーベリーを混ぜるという話も聞いたことがあった。が、私たちが欲しいのは樽まるごと。そんなある日、ひょんな事から知り合った人が、トスカーナ州とエミリアロマーニャ州の県境の山の中に家を建てることになり、敷地内に生えていたかなり大きなジュニパーベリーの木を何本か施工にあたり一年前に切った話を聞いた。これは!と聞くと、ほとんど原生林状態だったため、農薬や、殺虫剤の散布は全くなかった山の中で、切り出した後何かに使えるのではないかと、倉庫にとってあるいうのである。早速交渉して、引き取りに。

とはいえ保管中の虫食いの有無、大きさ的に樽にできるのか?使える状態なのか判断がつかないので、樽屋の友達トーマス君のところへ搬入。

トーマス君はもでな界隈でも若い樽屋さん。お母さん方のおじいさんの跡を継いで、この道に入った。

雑誌イタリア好きの取材にも快く応じてくれたり、A級鑑定士の資格試験の同期合格だったりと縁がある。見てもらうと、切り出して、また伸縮があるだろうから、ゆっくり乾燥させなくてはいけないから、時間がかかるよ。と急がないからとコロナの影響もあって早2年経過。やっとできてきたと去年の年末に連絡があった。

大きさは30Lの樽である。

車で運んで帰ってきただけで、車の中がむせかえるような香りが充満した。

早速樽を使えるようにしなくてはならない。まずは木屑や埃を掃除機で吸い取って、そこへグラグラ沸かした熱湯と7%の食塩を入れ、樽の中の殺菌、木の余分なタンニンを取り出すのが目的。通常3日ほどで良いのだけれど、木の香りが強いので、4日置く。まるでヒノキのお風呂に入っているか、アロマオイルを炊いているかのような凄まじい香り。

その間、樽がもれないか、チェックをしていく。そこで木材と木材のつなぎ目から漏れるのはタガを閉めれば、大して問題ではないけれど、ひびなどは水分が染み出してくるとタガを絞めてもダメなので、この数日でチェックが必要。4日で、20%くらい木に水分が吸収され、食塩水の色もすっかり真っ黒。そんな水を抜いて今度は3日ほど逆さにして乾かしていく。あまり乾かしすぎてもタガが緩むのでそこそこに。

醸造室に運び込み、いっぱいまで、酸度が強いワインビネガーを口いっぱいまで入れて、蓋をして通常1年置いて酢酸菌を植え付けていく。が、今回は癖が強すぎるので、2年置いてみようと思う。最終的にバルサミコ酢を入れて熟成して、自分が納得いく味になるのは20年以上はかかりそうだ。

多分ジビエ料理に抜群に合うだろうなと樽をくんくん嗅ぎながら、まだできぬバルサミコ酢に思いを馳せる。死ぬまでにできたら良いやね。と考えさせるバルサミコ酢は、時空まで超える究極の趣味なのである。

樽を使えるようにする作業動画にしました。

日本販売のご紹介

14年熟成バルサミコ酢

14回の葡萄の収穫が100mlの瓶の中に凝縮されています。栗、西洋オーク、桑、桜、アカシアの樽で熟成させた芳醇な香りと爽やかな酸味が特徴です。

バルサミコ酢 リセルヴァ

フォルニ家に250年以上伝わる家宝の樽から取り出した、奇跡のバルサミコ酢。圧倒的な芳香と複雑な歴史の味を、手作りのマヨリカ焼きのボトルに入れての限定発売

日本の販売店 伊勢丹新宿店地下一階ダローマにて扱いがございます。オンラインショップもご利用ください。


見学


バルサミコ酢の醸造室の見学にいらっしゃいませんか?

ホームページ

こだわりの製法、レシピなどご紹介しております。

2022年バルサミコ酢日本発売開始しました

今日2月9日、2022年年度バルサミコ酢の販売を開始いたしました!

今日は「福の日」なんだそう。と今調べて知りましたが、幸先いい感じ。

大変心配していた日本への輸送も無事成田の通関を終え、去年同様お世話になるダローマの山田さん

の元へ一番心配していた上下もきっちり守られ、指示通りトランスパレットに乗って到着した模様。

今回14年熟成のバルサミコ酢は去年同様、イタリア製の瓶に、今回黒筒の箱をご用意して、売り場に並びます。こう言った紙容器をはじめとする包装資材業界の生産イタリアトップの州はエミリアロマーニャ州なんだそうで、頼んだメーカーさんも超大手ファッションメーカーのものやら高級食材メーカーの化粧箱などを作っている会社で、全てイタリア製。外側の木目調の黒い紙もイタリアの会社にこだわりました。

瓶が空になったら、お花を活けてもとっても素敵なのでぜひお試しください。

この14年熟成のバルサミコ酢とは別に、250年以上フォルニ家代々に引き継がれる樽からとったバルサミコ酢リセルバを8本だけ送りました。

こちらは木箱にマヨリカ焼きの容器。

我が家でも年に2Lしか取り出さない、本当に希少なもの。容器にもこだわりにこだわりました。

マヨリカ焼きの素地はファエンツアのエンニョさんがロクロをひいて一つ一つ作ってくださったもの。雑誌イタリア好き45号雑誌イタリア好き45号の中にも紹介されています。

この容器タラーニョという名の容器で、エミリア周辺でつかわれていました。もとはワインなどの液体を馬車で運ぶ際馬車の荷台に取手に紐を通して吊るして運んでいたもので、かなり大きなものが主流

そのためあまりにも小さいので、この形にひける技術の高いロクロ師さんがおらず、我が家の家紋を一つづつ絵付けしてくれた陶芸家の林由紀子さんが頼み込んで作って頂いたもの。しかも、液漏れしないようにと、口の部分何箇所かにシェイプがああるようにと日本人らしい細かい注文をしてくれたので、難易度がさらに上がったタラーニョ。

絵付け作業、真っ最中の写真カーブしている面に絵をつけるのは難しいのだそう。

由紀子さんは素晴らしいアート作品を作る芸術家。

お皿や容器を絵付けするお仕事ではなく、長年Bertozzi&CasoniBertozzi&Casoniというアート工房のアシスタントを務めていて、忙しいのにも関わらず、快く絵付けを快諾してくださいました。

林由紀子さんはマルケ州の旅のアテンダントもされていらっしゃるので、気になる方はこちらのサイトをどうぞ。

2019年に10個、今年2022年に10個作って頂いた、本当に一点もの。何一つ同じものはありません。こちらはネットショップでの扱いはございませんので、ダローマ店頭もしくは、お問い合わせをお願いいたします。

販売店のご案内

ダローマの伊勢丹新宿店地下一階と、

ダローマ ネットショップダローマ ネットショップで販売を開始いたしましたので、ぜひご利用ください。

2022年の販売を機にホームページをリニューアルいたしました。

レシピ、醸造の動画なども公開しておりますので覗いてみてくださいね。

ホームページ

2022年の商品のご紹介、

バルサミコ酢の醸造の過程、レシピも盛りだくさん

14年熟成のバルサミコ酢日本へ向けて出発

22日雲一つない快晴の朝、我が家から日本へ向けてバルサミコ酢出発しました。

梱包には抜かりがないのはもちろんなのですが、正直イタリアの国内運送会社に少しも信用がない私。

去年も国際貨物を引き受けてくれるフォワーダー担当者にも

「こちらでの扱いは万全を配しておりますが、イタリア国内便で破損というケースがありまして。。。」と言う恐ろしい助言をいただき、案の定運送各社に問い合わせしたら、液体は扱ってない、上下の確約はできない。割れ物?保証できませんね。と

因みに、日本から母が去年の10月の下旬にクリスマスプレゼントを送ってくれたらしいのですが、4ヶ月近く経った今まだついておりません。今年のクリスマスには着くのだろうか?

そんなわけで、一番信用できるのは自分しかいないため自ら納品してきました。

今回のフォワダーの倉庫はトスカーナ州プラート。CO2排出量少ない方がいい。そんな訳で、電気自動車で届けてまいりました。ちなみに我が家の電気自動車の充電は100%太陽パネルからクリーンエネルギーです。霧の合間をぬって出てくる太陽で充電する植物並みの我が家のメイン動力車。

後は自転車と徒歩と、ローラースケートとどこまでもエコを追求中。

厳冬の最中も自転車。子供が小さな時は湯たんぽぬいぐるみを持たせてぐるぐる巻きで保育園まで。その甲斐あってか?小学生になってからは、いつでも半袖で暮らすようになってしまいました。

イタリアの電気自動車事情についてはまた今度。

結構重量あるけど、大丈夫?と夫に心配されましたが、実際女性1人で行った方がだいたい高待遇のイタリアですから、心配は全くせず出発!

モデナ南から高速道路(A1)でローマ、フィレンツェ方面へアッペンニン山脈を超えていく高速はかなりのトラックが走ってます。まあこれも通常通り。

Urbanpost の写真をお借りしました。ちょっとカーブの少なめの右の道を選択

トンネルとカーブの続く山道を降れば、パッとフィレンツェの街が見えて来た辺りを右折して海側に向かって行けばプラートに到着。工業地帯の一角に巨大な集配倉庫がありました。トラックの通用門が指定された番地。当たり前ですが、トレーラーや、巨大なトラックしかいない。

倉庫の作業員がさっと出てきてくれましたが、乗用車自体、相当場違いな上、ここプラートは中華系の巨大コミュニティーがある事で、有名な地区。東洋人が何をしにきたか?と言わんばかりにジロジロ。日本への荷物で、担当者の名前と、書類を見せると

「あーはいはい、荷物下ろしてあげるからここに駐車して」と手際よく他の作業員に指示してトランスパレットにパパパと乗っけてくれました。

もちろん私は「上下があるのと、液体で割れ物だから扱いに気をつけて!」と横で大騒ぎ。

こうるさいおばさんと思われても、破損が起きても代替え商品を一切出せないバルサミコ酢ですからなりふりなど構ってはいられないのです。なんなら飛行機に搭乗するところまで監視員として、ついていきたい。

9個のダンボール箱ですが、日本への出荷にはストレッチフィルム(ラップのお化けみたいに大きなもの)で梱包してもらって、トランスパレット一つとしてもらう必要があるので、しつこく念を押して、車のナンバーと運転手名の記入をさせられ、納品書にサインをしてミッション完了。ここからマルペンサに運ばれて、飛行機で日本へ飛び立ちます。後は事故、破損などがないように、無事を祈りながら帰途に着きました。走行距離270km途中で充電せずに帰ってきて太陽光で充電。

荷物を送るだけでも発送劇?!になるイタリアから、鳴り物なしで「普通に着くはず。」ですので、皆様今しばらくお待ちくださいませ。

去年同様da Romaから販売をしていただきます。伊勢丹 新宿店地下一階のこちら。

遠方の方はオンラインショップでの扱いもございますので、よろしくお願いいたします。

2022年14年熟成バルサミコ酢瓶詰め終了!

今年もおかげさまで、14年目熟成させたバルサミコ酢をボトリングすることができました!

去年お買い上げくださった方から、まだですか?とお問い合わせを頂いたり大変感謝をしております。

 比較的暖かかった年末から一転。年始の数日後から大寒気がイタリアへ一気に気温が下がるのを待って、10日間。115日バルサミコ酢を抽出しました。冬の寒さの中では、樽の中の酢酸菌は活動できず、休眠した状態。バルサミコ酢の中のオリが樽の底に沈み、透明感が一番増す時期で、製品として液体を抽出するのに最適な時期です。

 

2021年の夏は、大変な暑さに加え、本当に雨が少なく、乾燥が激しかったのが特徴でした。例年と比較し、葡萄の収穫量も20%くらい低かったと言うのがモデナ全体統計が出ていました。

そんな乾燥した夏を越したバルサミコ酢の液体蒸発量は通常の年より心持ち多かったため、2022年は少な目に24Lほど取り出しました。我が家の樽のセットは33セット。最終製品を取り出せる一番小さい樽(15L)33個ありますが、そこから700ml程しか取り出していないのです。が、このバルサミコ酢、中には15年間で収穫した14回分の収穫の葡萄が入っている計算。注:去年の分はアルコール発酵中。

ここ3年ほどずいぶん香りが変わったきた!とはっとするような香りがしていますが、今年はまたさらに良くなってきています。大瓶に樽から移し替えたバルサミコ酢の光沢と赤みがかった褐色は光を通してみるとそれはそれは綺麗です。

一本づつ瓶詰め。

シールキャップをヒートガンで密着させる。輸送時に絶対に液漏れをさせるわけにはいかないためこれは必須。

一本一本の表面をアルコールを染み込ませた布で拭き、

14年熟成のシールを貼る。

今回このシールは去年のPVCをやめて、紙製。環境に優しいものを使用したいと言う事から選びました。

去年ハプニング末出来上がらなかった紙筒去年ハプニング末出来上がらなかった紙筒今年は間に合いました!木目のついた黒い外装はバルサミコ酢の樽をイメージして、文字印刷は一旦やり直しがあったものの、綺麗に印刷されて、三つの星と真ん中の菱形のフォルニ家の家紋を入れています。デザイン、色味全て自分たちで決められるのは面白いし、何より愛着が湧きます。

しっかり瓶を固定できるように中に仕込んだのは紙製の円盤。キャップとそこの部分のクッションに包材業者からは、ポリスチロール製を勧められたのですが、出来るだけプラスティック製品を減らしたいため、紙製にこだわりました。

 

こちらも一個づつ中に仕込んでこちらは家族総出。

本数が少ないのでロット数も手書きにこだわって、やっと梱包作業に入りました。

来週日本行きの運送会社の倉庫へ納品して、日本へ飛び立つ予定です。

皆さん今しばらくお待ちくださいね。

2021年葡萄作業 その3 煮詰め作業

葡萄を絞る作業が終わると、ここからがワイン醸造とは全く違う、バルサミコ酢造りだけの作業に移る。葡萄の果汁を煮詰める作業だ。

バルサミコ酢の大きな特徴は、酢なのに甘味が残っているところだろう。バルサミコ酢の大きな特徴である芳香の第一ステップもこの煮詰め作業から始まる。

ここからちょっと化学的な話

絞った葡萄の果汁を大釜で煮詰めることによって、糖類が熱と反応し、芳香アルデヒドの一種であるフルフラールを形成する。

こんなふうに書くと一体何の話?となる読者も多いだろう。プリンのカラメルソースをイメージして欲しい。水に砂糖を煮溶かしただけのシロップ(ガムシロップ)には無臭と言って良いほど、香りはないけれど、プリンのカラメルソースには鼻に抜けるような芳香がある。

もちろん香りがよくなるからと言って、プリンのカラメルソースのように葡萄液を焦がしてしまっては、苦いバルサミコ酢ができてしまうからそれはご法度。ではどうするのかというと、大釜を使って直火で煮詰めるという作業を行うのである。古くは薪、現在ではガスの火を使って煮詰め作業をする。どうしても火は下からということになるので、鍋の底の火力と近い部分は高温になり、焦げないまでもフルフラールが形成されやすい環境が出来上がる。

もちろん液体は温度の高低差があれば対流が起こるので、大量の水分を含む液体が入っている鍋の中では、そこが焦げ付いてしまうことはないが、液体は煮詰め作業を行うにつれ、白い葡萄を使っても褐色へとどんどん変化し、とても良い香りが庭中に広がる。

左が絞ったばかりの葡萄液。右に詰め始めて数時間経った葡萄液

皆さんもきっとジャムを作っているときなどにある時点から、家の中がジャムのいい香りに満たされるのを感じたことがあるのではないかと思う。それと同じ原理なのである。

それからもう一つ忘れてはいけないのが、メイラード反応。こちらは糖とタンパク質(アミノ酸)を加熱したときに行われるアミノカルボニル反応の一種で、こちらも糖とアミノ酸の種類によって、複雑な香気成分の生成させ、褐色色素が生じる。わかりやすい例を出すと、肉を焼く、玉ねぎを炒めるなどの色の変化、また醤油や味噌の醸造中の褐変もメイラード反応によるものなので、バルサミコ酢造りにおいては、まず葡萄液の煮詰め作業、熟成期間中にもこのメイラード反応が進むと考えられ、バルサミコ酢独特の色である褐色へと導いていく。

バルサミコ酢の樽の中の液体の色の変化

前述の二つの反応は、酵素は関係ないけど、葡萄のには酵母や酵素というものも働くからどんなに白い葡萄を使ってもどんどんと褐色に変化していくから褐色のバルサミコ酢が生まれるというのがわかっていただけたら嬉しいです。

葡萄の可能性というのは本当に大きくて、バルサミコ酢造りというのは科学的なことを突き詰めれば突き詰めるほど奥が深くて面白いのですが、実際の作業現場はものすごく重労働。やーっと絞った葡萄の汁は電動ポンプで絞った先から大釜へ。流石に400Lを越す液体を手作業で移すのはもう体が持ちません。

大窯に葡萄液を入れる

大体この作業が終わるのは夕方で、全ての液体を移し終わった後は蓋をして、次の日の早朝に火を入れる準備をします。

点火は朝の5時ちょっと前。まだ真っ暗な中、蓋を取り、強火で約2時間すると大量のアクが表面に浮いてきます。

灰汁が固まり始めたところをすくう。灰汁だけでも毎回20kgほど

それを全て取り除いて火を弱め、表面が動くぐらいに火力を調節しながら煮詰めていきます。葡萄の糖分にもよりますが、大体火を弱めて12時間後くらいに作業終了。その間、葡萄の収穫に出かけ、葡萄を絞る作業を並行して行うので、一日中作業している感じ。煮詰まる頃にはすっかり日も暮れて、辺りは真っ暗。煮詰めすぎてしまっては、大事なアルコール発酵が起こらなくなってしまうので、煮詰め加減には大変に気を使います。

煮詰まるのは夜

褐色の艶のある液体を眺める時間もなく、熱々のモストコットをステンレスタンクに保管して、その日絞った葡萄の果汁を大窯に入れ次の日に備える。こんな作業が続きます。

雨が降れば収穫や絞る作業ができないので、おやすみになりますが、葡萄を煮詰める作業は続行。

雨が降ると収穫作業や絞る作業はお休み

今年は最後に雨に降られましたがおおむね良好。雨上がりにダブルで虹が見えてなんだか得した気分でした。

葡萄畑にかかるダブルの虹

今年もなんとか葡萄作業が終わったことに感謝して!

葡萄の収穫作業の様子はこちらから

      ↓ ↓ ↓

2021年の葡萄作業 その2、葡萄を絞る作業

摘みたての葡萄がトラクターに乗せられてやってくると,すぐに絞る作業に入る。

モスト(葡萄の果汁)の品質を保つためには、時間との勝負。手で摘んだ葡萄が入った容器は一つ30kgの重さがあり、毎回2224(総量660720kg)が運び込まれる。

トラクターの荷台から滑らせるように、除梗機に入れる。除梗機は葡萄から枝の部分実の部分を分けて、実を半潰しにしてくれる機械。葡萄の実は半分潰れていないと、圧搾機で絞れない。

除梗機の中はこんな風になっている

ワイン醸造なら、半潰しにした葡萄をタンクに入れて発酵させ、発酵したものを圧搾器で絞るのだけれど、バルサミコ酢造りはモスト(葡萄の果汁)を煮込む作業があるので、生のまま絞る。搾りたての白葡萄は綺麗な緑色。

葡萄生絞りジュース。飲み放題良いわね〜と言われる事もあるけれど、葡萄の収穫時の確認で散々葡萄の実を味わっている上、収穫や絞る作業でなんだか全身ベタベタで、甘い香りが立ち上っているから、葡萄ジュースでマリネされてしまった気分で、ごくごく飲みたい気分は失せてしまっている。はっきり言って早くお風呂に入りたい。

2人とも笑顔だけど、葡萄果汁でベッタベタ

あんなにあった葡萄を絞ると、大体460L強の液体で、500Lの大釜にぴったり入る量だ。

カッチャンカッチャンレバーで圧をかける作業

油圧式の圧搾器で、少しずつ圧をかけて絞るけれど、バルサミコ酢造りに使う葡萄の汁は苦味や雑味が出ないよう、圧搾器で絞り過ぎないモストフィオーレ日本語で言えば一番搾りの状態のものを使うから、搾りかすには種や皮意外にもまだ大量に水分が残っていて重いの何の。

 

これを圧搾機から取り出して、次の日に備えるのは毎回大仕事。この絞りカスはどうされるのですか?とよく聞かれるのですが、畑に戻して肥料になります。まさに無駄なし!

こんな風に置いておいて、土を耕すときに漉き込んでしまいます。

子供達は、昔からお手伝いしてくれてますが

 

1歳の頃前とは運べるものが進化しました。

今回は私と身長がほぼ同じになった13歳の娘、細いけどカンフーや空手で身体を鍛えるものすごい力持ちずいぶん手伝ってもらって大助かりでした。

まだまだ葡萄作業続きます。

2021年の葡萄作業 その1 マンマの風格は1日にしてならず。

2021年の葡萄作業。今年も無事葡萄の収穫作業を終える事ができました。

朝早くから夜まで、約10日に渡る作業、天候に左右されるため天気と睨めっこで作業を進めます。

私たちがバルサミコ酢に使う葡萄は、主にトレッビアーノという品種の甘さと酸味のバランスの良い白い葡萄を使う。8月下旬から定期的に糖度検査をして、収穫時期を決めています。

葡萄の糖度を測る動画はこちらからこんな感じで糖度を測る作業をしています。

今年は夏に入ってからというもの、本当に雨が少なく、葡萄の粒が例年より小ぶりで、糖度の上がり方も気持ち遅い感じだ。9月に入って、朝晩の気温差が大きくなるにつれ、糖度も随分と増してきました。23月の剪定では昨年よりも実がなるように芽を多めに残した結果、かなりの収穫量が見込めそう。

葡萄の剪定作業動画はこちらから

5ヘクタールある我が家の葡萄畑のバルサミコ酢に使う葡萄は全て手摘みなので、人員を確保が必要です。葡萄の収穫は朝8時半から11時。約650kg700kgを収穫し、摘んだ葡萄は数時間以内にすぐに絞る作業を行います。

まあ文章で書けばさっさっさーという感じですよね、が、そうじゃないんです!

まず人員確保。葡萄の収穫をしてくれる人がいない!バルサミコ酢で使う以外は機械摘みのため、手作業の要員は別途手配が必要なのである。トラクターの運転手を引き受けてくれるのは、葡萄畑の管理をお願いしているマルコ。その他に3人の摘み手が必要なのだが、この時期何処も収穫真っ最中。イタリア人のベテランさんは引っ張りだこで、数時間のためにはきてくれない。来てくれたとしても数日。季節労働者的な移民系の外国人の方を、色々な方から紹介してもらいコンタクトを取るも、前日の夜にドタキャン、朝来ないなどなどアクシデント続き。ここまで一体何人に電話したであろうか。。。結局私が入って総指揮を取り、葡萄のなり具合や、仕事ぶりを見ながら予定時間内に収穫を終了。次の日の集合時間や、仕事の開始時間を再度確認し、トラクターの荷台に積み込まれた葡萄を、家の敷地内の作業場へと運び入れ。

葡萄を絞る作業の準備をしていた夫いはく「牛を肥す事ができるのは主人だけ(イタリアの諺で主人の目が届かないと利益は出ないという意味)なんだから、頑張ってね」って!このようにしてイタリアンマンマの風格が確実に形成されていくイタリア生活。

葡萄を絞る作業は次回。

イタリア バルサミコ酢醸造を講義する

先週女子栄養大学の栄養学部の34年生の現代食文化論の特別講師を2時間100分に渡りさせていただきました。学生さん、教員の皆さんと35名以上の方の参加がありました。

2年前、特別授業をする機会をいただき、そのご縁でオンライン授業という運びになりました。

2年前の講義の様子

伝統的食文化の保存という観点からバルサミコ酢の醸造についてはもちろん、同じ栄養学を学んだ先輩として学生さんにメッセージを込めてお話してください。とのこと

モデナの場所や歴史、食文化を織り交ぜながら、伝統的な製法と工業的な製法のバルサミコ酢の違い。

我が家の伝統的な製法のこだわり。

手作業の葡萄作業について、動画で葡萄作業をご紹介

樽の移し替えの話動画はこちらから

樽の中では一体何が起こっているのか?科学的な見地や実際の色の変化。

同じセットの5つの樽こんなに色が変化していくのです。

バルサミコ酢の鑑定の方法。品質、製法による味の違いをどのように感じるのか?動画はこちらから

認証についてなど説明をさせていただいたあと、コロナ禍においての活動を紹介しました。

毎回オンライン物をやるたびに、起こる事なんですが、長く喋っていると

醸造室からライブ できるだけみやすいようにビデオカメラをWebカムにして、写真画像もスムーズに見せるために工夫しました

「聞こえてるかな?わかりやすかったかな?つまらなくないかな?」と不安になるものです。

大学の授業という事で、プライバシーの保護という点から、学生さんのオーディオはもちろん、ビデオもオフ。

反応が見えない.…

YouTobe動画も交えながら、どうやったら飽きの来ない授業にできるのか?伝えなくちゃ!と気をつけて熱を入れて話すのですが、ふっと素に戻る瞬間。だんだん頭の中がグルグルとなる一番恐ろしい瞬間がやってきます()

もちろん台本的なものは用意してますので、迷子にはならずに済んでますが。

受講した方はどうだったのかな。。

と思っていたところへ

今日、早速学生さんたちの講義の感想をいただきました。

その中から抜粋してご紹介します。

イタリアの本物のバルサミコ酢について知ることができて良かった。

こんなに手間のかかるものだとは知らなかった。伝統的製法のバルサミコ酢は時間も手間もかかり、一般的に販売されているものとは違うということを初めて知った。

イタリアのどこでも作れるというわけではなく、ごく狭い地域でしか作れないということを初めて知った。

イタリアのエミリア・ロマーニャ州それも、モデナ、レッジョエミリア、ボローニャの端っこでしか作られていない伝統的なバルサミコ酢

白葡萄から作られるものということに驚いた。

トレッビアーノという白ブドウが一番バルサミコ酢醸造に向いていると言われています。

何十年もかけて作るバルサミコ酢、一度味わってみたい

一度イタリアに行って見てみたい

味噌や醤油同様、気候風土が関係する発酵食品の面白さを感じた。

質問もありましたので、ここでお答えしようと思います

質問

同じバルサミコ酢を作る蔵によって常在菌が異なると思うのですが、味が違うのですか?

答え

はい、違います。鑑定士として、何種類ものアチェタイア(バルサミコ酢の醸造蔵)のバルサミコ酢を鑑定する機会がありますが、微妙に違い一つとして同じ味になっているものはありません。

1000サンプルほどここにありますが、全て味が違います。

質問

種類の違う木樽を使って作るということですが、樽の配列など決まりがありますか?

答え

いいえ特に決まりはありません。なので、各醸造所によって木の樽の種類は自由に決めることができます。なので、樽のセットによっても味が違います。

我が家では漏れの少ない西洋オーク材と栗など材質の硬い樽を主に使用しています。2番目に大きな樽40Lに変化をつけて桜、アカシア、桑などをを入れています。

質問 伝統的なバルサミコ酢は栄養成分も優れていそうですがどうですか?

答え 抗酸化作用があるポリフェノールがたくさん含まれています。また酸味は酢酸だけでなく、クエン酸、りんご酸、乳酸、酒石酸、など沢山の有機酸が含まれており、有機酸の身体への疲労回復や抗ストレスなどにも効果があると言われています。

モデナではその昔、バルサミコ酢の効用について

「死人も起き上がる」と言われ薬屋で高価に売られていたことも

希少性、芳香と複雑な味のバルサミコ酢。死人が起き上がることはないにせよ、昔からカリスマ性がある特別なお酢であった事は間違いないでしょう。

アンケート、感想を書いて下さった学生の皆さん、そして、早々にまとめて下さった担当の平口先生ありがとうございました。

イタリアでまた日本で皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。

YouTobeチャンネル「Akane in balsamicland」ではバルサミコ酢醸造や、モデナの食文化などをご紹介しています。ぜひみて見てくださいね。

バルサミコ酢との出会いで人生が変わった?話 #5

年が明けてからモデナにあるエノロジカモデネーゼエノロジカモデネーゼという樽屋を訪ねた。

樽職人さんミゼッリさんとの出会いである。

子供の頃からお父さんの仕事を見て覚えたという、今では数少ない叩き上げの職人さんだ。70代というところか?バルサミコ酢の醸造について細かく、しかも科学的に教えてくれた。それだけではない、バルサミコ酢に傾ける情熱をも伝染させてくれたのである。

図を書きながら、説明してくれた。すると

未だに説明書きのメモがとってある

「貴方は生物学とか、微生物学を勉強したことがあるでしょう。」というのである。

「わかりますか?大学では微生物学もやりましたけど、専門は栄養学や、食品化学を勉強しました。」

というと、

「話にちゃんとついてきてるものそりゃわかるよ。貴方もっと知りたかったら、スピランベルト市にあるバルサミコ酢愛好者協会の主催する講習会に参加すると良い。残念ながら今年は講習会は始まっているから来年にでも是非参加しなさい。」という。

「貴方たち商売としてバルサミコ酢を作るのかい?早く稼ぎたいと思って始めるのかい?」

とよくわからないことを言うのである。

マックスが

「我が家には先祖代々伝わる樽があって、出来るだけ、伝統的な製法にのっとって、良いものを私たち夫婦の趣味で作りたいと思っている。本当に良いものは100年かかるでしょう。」と答えると

「人任せでなく、自分たちで作るんだね。」

満足そうに頷いて、

「それならば、新しい樽を買ったら、ゆっくりワインビネガーを樽に入れておきなさい。そしてそのうちにこちらのお嬢さんはしっかり勉強すると良い。」

と、まずは一度醸造室の場所を見にきてくれることになった。

早速次の日にミゼッリさんは我が家にやってきた。

まず、漏れのある家宝の樽の状態を見てもらい、修理が必要があるという。手で愛おしそうに樽の全体を触り

「こんな樽はおそらくまだ子供の頃、僕のお爺さんが仕事していた頃に見たことがあるくらいのものだよ。見てみなさい、このタガは鍛冶屋が一つづつ、手で打ったもので、こんな鉄のタガは今はないよ。こういう作り方をしたものは、錆も出ない。今ではこういうものは作れないんだよ。これは1800年代の前半いや、もっと前のものかもしれない。中が二重になっているから、中の樽は一体何年経ったものかわからないくらいだよ。ともかく大事にしなさいこれは歴史の遺産だから」と舅やマックスにではなく、私にしみじみ言った。

モデナのガラスと呼ばれた緑色のバルサミコ酢の樽の栓として使われていたもの。こちらも100年を越すものである。

これから新しく醸造室と思っているスペースを見てもらうと、

「これは良い醸造室になる。楽しみだ。この醸造室を見てあなたたちが伝統的なものにこだわる理由もよくわかったし、趣味で急がずに良いものを作りたいというのがわかったよ。良い樽を揃えさせてもらうよ。」と言い残して帰っていった。

続きます。

バルサミコ酢造りを動画で紹介しています。