2007年から仕込み始めたバルサミコ酢の樽から、14年経った20211月初めてバルサミコ酢を初めて取り出しました。

そんなに長い間バルサミコ酢を作っていたのにバルサミコ酢取り出さなかったのか?という疑問が湧くでしょう。そうなんです、各樽から毎年、50ml(33セットあるので計1650ml)を科学検査、官能検査(味をみるため)検査をするために取るため以外、一切取り出してきていなかったのです。

酸度検査、官能検査に使う道具

伝統的なバルサミコ酢の芳醇な香り、味というのは数年で作り出せるものではありません。

例えば、初めの数年は新しい樽にはとがったような味であったり、酵母で作られたアルコールはまだ酢酸発酵の途中であり、生まれる酸味は刺激が強く、まだ慣れていないお酢にもなりきっていない状態のところから、7年ほど経ってから伝統的な製法の大きな特徴の一つ、材質違いの樽の移し替え作業を行っていきます。そうすることにより、木のエッセンスが混ざり合い、長い長い時間をかけて、ゆっくりと微生物が働いて有機酸が増え、まろやかな酸味と芳香が増し、本物のバルサミコ酢の成熟した複雑な香りと味が初めて生まれるのです。

伝統的な製法で作るバルサミコ酢を見ると、高濃度のポリフェノールを含んでいます。

なぜなら葡萄の果汁を煮て濃縮させ、大変に長い熟成期間を経ると言う製造過程において、葡萄や、樽の木が持っているアントシアニン、カテキン、タンニンなどのポリフェノール同士が互いにつながる重合反応が起こりポリフェノールが劇的に増加します。重合したポリフェノールは抗酸化力が高まるため熟成期間が長いほど、抗酸化作用は増加しますので、高いアンチエイジング効果が期待できると言われています。

また、通常の食酢と比較し、酸度が高いのは、酢酸菌が生み出す酢酸だけでなく、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸と言った沢山の有機酸を含んでいるためです。これらの有機酸には旨みや清涼感をもたらし、さらに香りにも大きな特徴を与えています。酸味は緊張を緩和し、疲労回復やストレスを和らげる作用があるというのは梅干しレモン、ゆずなどを通して皆さんもご存知の通り。

お刺身にもバルサミコ酢、良いお塩をぱらり

このポリフェノール類、有機酸や香りだけでなく、旨みの元にもなりますから、塩分を控えたお食事にもバルサミコ酢を加えることで、高い満足感が得られます。

ここ数年、樽を開けるとバルサミコ酢独特の芳香がするようになってきました。一定量の販売をお願いされることがあったのですが、まだ、まだと断り続け、ようやく今年、夫マッシミリアーノと納得いくものを製品として、皆さんにお披露目する事を決めました。とはいえ250年の熟成を経た我が家の家宝のバルサミコ酢と比べたら、13(1年目は熟成年に数えておりません)熟成のバルサミコ酢はまだまだうちの娘同様、若い。まだまだ進化する可能性を秘めています。年々年を追うごとに香りも味も変化するのが、伝統的製法で作るバルサミコ酢。成長の過程を見守るというのも本物のバルサミコ酢を味わう大きな醍醐味ではないか?と思います。

 

20211月に製品として取り出したものから100mlの瓶に260本瓶詰めをしました。そのうち200本を日本に送ります。まずはあるデパートの御得意様限定の販売会にまずは出品されるそうです。

たった100mlの小瓶の中には、概算2kgの葡萄が詰まっている計算になりますが、バルサミコ酢はそんな物質的なものではなく、長い時間と情熱と愛情、微生物が織りなす発酵と言う不思議の賜物。バルサミコ酢を味わっていただけたらと思います。

 

バルサミコ酢についての記事はこちらから

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。